中小企業診断士は国内唯一のコンサルティング業務に関する国家資格で、「日本版MBA」ともいわれています。
どちらも経営学全般の学習をすることには変わりありませんが、それぞれの制度の仕組みや取得方法などは大きく異なります。
ですが、「両者の違いがよくわからない」「学習を始めたいけどどちらを始めればいいのか」と考えている方は多いのではないでしょうか。
今回は、「日本版MBA」と呼ばれている中小企業診断士と本家MBAの違いと共通点を解説していきます。
MBA、中小企業診断士とはそもそも何か?
まずはじめに、MBA、中小企業診断士について軽く説明をさせていただきますね。
MBAとは
MBAは「学校教育法」に基づく経営学に関する修士号としての学位で、ビジネススクール(経営学大学院)過程を修了した時に与えられるものです。
「Master of Business Administration」の略で、日本語に訳すと経営学修士や経営管理修士となります。
MBAは資格ではなく学位になるので、履歴書作成の際は学歴欄にMBA修了の旨を記載します。
中小企業診断士とは
中小企業診断士は「中小企業支援法」に基づく経営コンサルティング業務に関する国家資格で、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家という位置付けです。
中小企業者が適切な経営診断や助言を受ける際、その選定を容易にするために、経済産業大臣が中小企業診断士の登録を行います。
中小企業診断士は学位ではなく資格なので、履歴書作成の際は資格欄に記載することになります。
中小企業診断士はMBA同様に、ビジネスや経営について学習する点では似ていますが、細かい習得内容や取得方法は異なります。
次項から詳しく見ていきましょう。
中小企業診断士とMBAの違い
取得方法
MBAを取得する際は、経営学大学院(いわゆるビジネススクール)に通い修士過程を修了する必要があります。
国内・海外は問われませんので、自分に合ったスクールを幅広い選択肢から選ぶことができ、大きく以下の4つに分けることができます。
仕事を休職・退職をする必要があること、取得費用が相対的に高いことはネックですが、最近では通学を必要としない「オンラインMBAコース」を設けているところも増えています。
国内ビジネススクールは、海外同様にMBA取得に専念する人向けの「国内フルタイムMBA」のほかに、会社勤めをしながらMBA取得を目指す人向けの「国内パートタイムMBA」があります。
また、こちらも通学を必要としないオンラインMBAコースを設けているところも多いです。
一般的には、国内ビジネススクールは海外ビジネススクールよりも授業料が安いケースがほとんどです。
続いて中小企業診断士ですが、主に以下の2つの取得方法があります。
多くの受験生は、TAC・資格の大原・MMCなどの資格取得支援スクールに通ったり、通信講座で知識を蓄えて挑むという経緯ですが、試験に受かりさえすれば良いので、別に独学でも全く問題ありません。
もう一つの方法は、2次試験を受けずに中小企業基盤整備機構または登録養成機関が実施する養成課程を修了する方法です。
細かくいうと、中小企業大学校で行われているコースが養成過程、その他の機関が実施しているものを登録養成課程といいます。
これは教室内での座学および実際の中小企業診断実習を行うカリキュラムなのですが、修了すれば必ず中小企業診断士の登録をすることが出来るという特徴があります。
鬼門といわれる2次試験の突破が不要なのはメリットといえるかもしれませんが、試験合格と比べると高いコストがかかる点、最低でも1次試験の合格が必要になる点などを考慮した上で、どちらが良いのか選択してください。
費用・期間
MBAの取得費用としては、ざっくり以下のような金額になります。
なかなかの金額、というか、人生を左右するくらいの金額になってきますので、かなり覚悟を持って挑む必要があることが想像できます。
一方、中小企業診断士の取得費用については資格支援スクールに通わずに独学で試験突破をする場合は、3万円程度の受験代(1次試験:13,000円/2次試験:17,200円)と参考書購入代のみで、資格支援スクールに通う場合はプラス20〜30万程が一般的です。
MBAに比べて格安なのがわかりますが、養成過程による取得を目指す場合は200万程度の受講料がかかります。
中小企業診断士とMBAの共通点
学習内容
MBAは企業経営に係る全般的な知識を習得を目指しているため、経営戦略、マーケティング、人的資源管理、財務会計、オペレーション管理、ビジネス法、経済学などの様々な領域を体系的に学びます。
また、座学だけでなく実際のケーススタディを通じたグループディスカッション等も行っており、学習した知識を現場で活用できるようなプログラムが組まれています。
次に中小企業診断士ですが、1次試験科目は企業経営理論、財務会計、運営管理、経営情報システム、経済学・経済政策、経営法務、中小企業経営・政策であり、MBAと共通する要素が沢山含まれています。
2次試験に関しても、中小企業の経営課題抽出や経営課題解決に資する助言を行う実務事例について問われますので、この点でも中小企業診断士とMBAは類似していることが多々あるということがわかりますね。
異なることがあるとすれば、MBAは大企業を対象とした学習、中小企業診断士は中小企業を対象とした学習ということでしょうか。
一部では、MBAは理論主導型で中小企業診断士は現場主導型だという比べ方もされているようですが、真意はよくわかりません。
人脈が広がる
MBA・中小企業診断士ともに学習過程の段階から様々な人脈ができることは共通点であり大きなメリットであると感じます。
MBAは一緒に講義を受講する多くの人たちと切磋琢磨して修士課程の修了を目指す上に、グループディスカッション形式の講義もあるので、受講生同士で親しくなる可能性は大いに高いといえます。
何かしらの志を持ってMBA挑戦をしている人が殆どですから、お互いに共鳴する部分がかなりあるのではないでしょうか。
中小企業診断士も完全独学でない限りは、学習を進めていく内に高確率で多数の受験仲間ができます。
1次試験、2次試験ともに受験仲間との意見交換はモチベーションの維持に繋がりますし、知識補完ができる点でも試験突破に大いに役立ちます。
独学であったとしても、資格取得後は中小企業診断士のみが入会できる研究会などに参加することで、今まで出会うことのなかった領域の人たちとの繋がりが一気に増えていきます。
まとめ
この記事では、中小企業診断士とMBAの違い・共通点について解説していきました。
学習内容は基本的には似ているところが多く、また所要期間も大きな差はない、更に圧倒的に人脈が増えるという点は共通点です。
一方、取得方法であったり取得費用は大きな差があり、学習内容の基礎は同じであっても、大企業向けor中小企業診向けで多少性格は異なる部分もあります。
MBAの学習を始めようか、中小企業診断士の学習を始めようか迷っている方は多いと聞くことががよくありますが、ご自身の学習の目的や目標、更に予算などを総合的に勘案した上で、最適な選択をしていただければと思います。