合格後15日以上の実務補習もしくは実務従事を完了することで、いよいよ中小企業診断士になるわけですが、中小企業診断士の資格を有する者だけが入会できる中小企業診断協会というものが存在します。
筆者は、中小企業診断協会に入会するかしないかでその後の診断士ライフが大きく変わってくると考えています。
そこでこの記事では、中小企業診断協会の活動内容や入会することのメリット、デメリット等をご紹介していきたいと思います。
試験に関連する情報はネット上で散見されますが、試験合格後の情報は非常に少ないのが実情ですので、この記事を通じて中小企業診断協会について確認しておいてください。
名称独占資格?独占業務?中小企業診断士の資格にまつわるエトセトラ
中小企業診断協会の内容に触れる前に、中小企業診断士の資格について確認しておきたい点があります。
中小企業診断士という資格は名称独占資格であり、独占業務がないという点です。
独占業務というのは士業の特権みたいなもので、対象資格を持たない者はその対象業務を行うことができません。以下のようなものが独占業務にあたります。
- 税理士が行う税務業務
- 司法書士が行う登記業務
- 社労士が行う社会保険業務
中小企業診断士にはこういった独占業務が存在しません。
一方で、中小企業診断士ではない者が中小企業診断士を名乗ることはNGです。
中小企業診断士と名乗ることができる者は、中小企業診断士試験に合格あるいは養成課程を修了した者に限られており、このことが、名称独占資格といわれる所以です。
中小企業診断士を名乗るために必要なこと
中小企業診断士という資格が名称独占資格であることはお解り頂けたかと思います。
これに関連してもう一つ確認しておきたいのは、合格しただけでは資格名称を名乗ることができないという点です。
名乗るためには、中小企業庁を通じて経済産業大臣の認定・登録を受ける必要があるのです。
また、中小企業診断士には更新制度が存在します。
登録有効期間は5年間となっており、その間に必要な実務従事要件や研修の受講要件をクリアしておかなければ、資格を更新することができません。
そうなってしまうと、当然ながら中小企業診断士を名乗ることはNGとなってしまいます。
中小企業診断協会ってなに?どんなことをしている?
中小企業診断士に独占業務がない、名称独占資格であるという点を確認した上で、本題の中小企業診断協会に触れていきます。
中小企業診断協会に、協会の目的として以下のような文面があります。
これをざっくり解釈すると、中小企業診断士の利益を追求するための団体とも見てとれます。
しかし、協会への入会は任意であり、現に入会されていない診断士も多数いるのが実情です。
筆者は社会保険労務士の資格も保有しているのですが、こちらには社会保険労務士会という団体があり、資格登録要件として社労士会への入会はマストとなっています。
診断協会は任意で社労士会は必須という違いはどこから生じるのでしょうか。
その違いとは「独占業務の有無」が理由ではないかと考えられます。
中小企業診断士だけが取り扱える業務が存在しない以上、協会に強制的に入会させるだけの合理的な理由がないのです。
中小企業診断協会に入会するメリット・デメリットとは?
診断協会への入会が任意ということであれば、入会することのメリットとデメリットを洗い出して、メリットが勝るなら入会すれば良いということになります。
それでは、順番に見ていきましょう。
中小企業診断協会に入会するデメリット
まずは入会のデメリットからお伝えすると、シンプルに年会費が発生するという点になります。
診断協会への入会は各都道府県単位の協会に入会するという形式になっており、所属する県会によって違いはありますが、入会金5万円+年会費5万円というのが相場です。
これだけで合計10万円になるので、割と痛いです。
この金額を高いととるか安いととるかは個人差があると思いますが、これだけのお金が必要であるということはデメリットとして挙げられるでしょう。
中小企業診断協会に入会するメリット
他方のメリットですが、これはいくつかあります。以下に主なものを3つ挙げてみました。
- 仕事を紹介してもらえる
- 資格の更新が楽になる
- 協会の活動を通じて他の診断士とのネットワークが構築できる
中でも筆者が最も有効だと感じているのが仕事を紹介してもらえるという点ですね。
診断士の仕事には経営指導・相談といったものがありますが、発注者が行政機関というケースが非常に多いです。
その際、都道府県協会が仕事を受任し、会員である診断士に仕事を任せるという流れで業務が遂行されるのです。
都道府県によって件数や内容の差はあるでしょうが、協会に登録しておくことで診断士業務が任されることになるのです。
その仕事には当然ながら報酬が発生しますし、さらに資格の更新に必要な実務従事ポイントを稼ぐこと可能。
これによって資格の更新も楽になりますし、それ以外にも理論更新研修の受講もできる(有償)ので、未入会の方よりも格段に資格の更新がしやすい環境になります。
診断協会未入会でも理論更新研修を受講することはできますが、開催案内が送られてくるわけではないので、ご自身で情報を集めなくてはなりません。
もう一つ挙げられるメリットは、協会の活動を通じて他の診断士とのネットワークが構築できることです。
そうすることで、先輩診断士から仕事を振ってもらうことが期待できます。
独立診断士は一人で活動されている方が非常に多いですから、マンパワーや知識の不足は各人が抱えるネットワークで補われます。
新人であってもネットワークを広く持っておくことで、仕事の網に引っ掛かりやすくなるのです。
筆者の実例をご紹介すると、入会から半年を待たずに年会費分の収入を得ることができました。
これが多いか少ないのかはわかりませんが、入会しなければ得られなかったのは間違いありませんし、報酬以上の経験を得られたという実感もあります。
診断協会に入会すべき方としなくて良い方の特徴
上記で診断協会のメリット・デメリットをご紹介しました。
ここからは、診断協会に入会すべき方としなくて良い方の特徴をそれぞれ解説していきたいと思います。
診断協会に入会すべき方【経験を積みたい、人脈を作りたい方は必須!】
筆者の実体験からいえることは、中小企業診断士という名称を用いて何らかの仕事や経験を積みたい、でもきっかけが自分の周囲にない、という方は診断協会に入会すべきだと思います。
協会からの仕事のみで高報酬を得るというのは難しいかもしれませんが、将来に繋がる経験が積めますし、自身の成長も期待できると思います。
ただし、一点だけ注意すべき点があります。当然のことではありますが、ただ待っているだけでは得られるものは少ないということです。
自分に経験がない分野でも、とりあえずチャレンジしてみようという姿勢が大事だと思います。
そうすることで、自身の可能性を広げられるように思います。
診断協会に入会しなくても良い方【すでにコンサル業務のアテがある方】
続いて、筆者が考える診断協会に入会しなくても良いと思われる方とその理由をご紹介していきます。
入会しなくても良いと思うのは、コンサルティングファーム等にお勤めで、すでに本業で経営コンサル業務を行っている方々です。
このような方は、資格更新に必要な実務従事ポイントは本業を通じて獲得できますので、研修受講の要件さえクリアすれば資格を維持することが可能です。
また、本業を通じて経営コンサルの経験が積めるでしょうから、協会に入会するべき大きなメリットの一つが無くなっています。
ただ、他者とのネットワーク構築というメリットを得たいという方は入会すべきだと思いますし、そこに年会費5万円の価値を見出せるか否かが、入会を決めるポイントだと思います。
【結論】診断協会への入会をおすすめします!
結論として、筆者自身の経験からいえることは、診断協会への入会はおすすめ!ということです。
中小企業診断士の世界を垣間見るための、最もお手軽で簡単な方法が診断協会への入会と協会を通じての諸々の活動を行うことだと思うからです。
資格を取得するまでに多大な労力を費やすことになりますので、何の活動もせずに診断士ライフを終えてしまうのはあまりにももったいないことだと思います。
置かれている環境や、資格活用の考え方は人それぞれ違うとは思いますが、合格直後に明確な活動内容が定まっているという方は少数派でしょう。
そういった意味でも協会を活用して、とりあえず診断士活動を経験しておくというのはアリだと思っています。
なお、将来的に独立を目指すという方は、以下の記事で独立開業する方法や開業当初の仕事例についてまとめてますので、宜しければご覧ください^^
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